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高崎市立桜山小学校サイングラフィック

高崎市立桜山小学校のしつらえ

 時が経つと大切な思い出も次第にうすれていくものです。それが生まれて初めて通う小学校での刺激的で楽しい経験だとしても。母校が廃校という憂き目にあってしまったり、故郷から遠く離れて生活していたならなおさら、思い出すことはなかなかありません。それにしても、おとなになると最終学歴は問われても出身小学校を聞かれることがめったにないのは何故なんだろう。うすれつつある小学校での数々の記憶は、幼なじみや恩師たちと過ごした校舎とともに甦ってきます。重厚な昇降玄関、広くて長い廊下、ゆったりとした階段踊り場、天井の高い立派な講堂・・・。
 昨年からこの春にかけて、思いがけず小学校建設計画にかかわるという貴重な体験をしました。記憶の奥底に眠っている私の中の小学校とはあまりにかけ離れたその斬新なデザインにしばらくの間、期待と違和感が入り混じった戸惑いがありました。でも、姿を現したその校舎を目の当たりにしたその時、模型や計画図面を正確に読み取って、これから生み出される新しい空間(あるいは環境)を受容する能力にひどく欠けていた自分に気付いたのでした。
 一昨年の夏、私は東京にあるナスカ一級建築士事務所の会議室に置かれた畳二枚分もあろうかという建築模型の前にいました。小学校のサイングラフィックデザインの協力を依頼され、その打ち合わせのために。
 建築設計に求められている様々な配慮のひとつにその空間にふさわしい誘導、表示サインの計画があります。サイングラフィックにこだわり、そこまで気配りすることは決して多くはありません。いやほとんど無いと言っても過言ではなく、大きな建築計画でさえおざなりになることもあります。この施設にはサインばかりか、広い校舎と敷地内のいたるところに工夫、こだわり、配慮がちりばめられているのはこの建築を見れば一目瞭然です。地域解放という本来の学校にあるべき機能をはたすには、来訪者に対して案内表示サインが当然求められます。それだけで変化を楽しませてくれるジグザグ状の校舎には、冬場の季節風など地域環境に対応した配慮が隠されている。2階に集約されたオープン形式の普通教室は多様な用途にも対応できるよう配置され、学年、クラス間の活発な交流を促すのびやかな構成となっている。このような新たな試みを果たすために適切な学年表示サインとクラス表示サインが大きな役割をはたすのです。1階に配置された職員室や保健室、図工室や音楽室などの特別教室に施された表示サインには、グラフィック処理された巨大漢字が楽しく踊り、学びの場らしいしつらえがなされました。
 今はもう消失して、思い出の中に埋もれてしまった私の知るかっての小学校には、一緒にいたずらをした同級生たちや厳しい反面優しさを表現できる先生たちの場があった。この施設には、かっての小学校のように総てを受け入れてくれるであろうそんな建築物としてのしつらえを強く感じさせるのです。サインデザインを口実に、教師でもなければまして小学生でもない私が一足お先にくまなく校舎を歩き巡って、優しく居心地の良いしつらえのある場所を発見するのにそう時間はかかりませんでした。なだらかな傾斜の向こうに榛名山を一望でき、古くから拓かれた歴史ある地域に造られた高崎市立桜山小学校は、この地域に生まれ、移り住む子どもたちが通い長い時間過ごすのです。新校舎内では、これから確かに他の学校同様の営みが繰り広げられるはずですが、桜山小学校ならではのある種開かれた明るい環境から生まれる刺激的で濃厚な経験が子どもたちの記憶に深く刻まれるのです。明るい昇降玄関、のびやかな長い廊下、みんなが行き交う階段踊り場、清潔で開放感のある教室・・・そしてサイングラフィック。

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