イルカ、ひよこ、うさぎ、コアラ、パンダにキリン、そして子馬

 1歳にも満たないという幼子から就学前までの子たちが一日を過ごす保育園。そんな大切な時間を過ごす施設環境のグラフィックデザインを行う機会に恵まれました。
 環境が幼い子どもたちに与える影響は、はかり知れないことは想像できます。地域の気候や風土、家族や指導者などの周りの大人たちや身近な兄弟やお友だちの様子。そして住環境と同様多くの時間過ごす学校や保育園等々・・・。高い天井と大きな丸窓のびやかな空間、床や壁面に木材をふんだんに使いそれだけでも居心地のよい環境に生まれ変わった祝昌寺第二保育園。少しでも子どもたちが元気に楽しく、それでいて穏やかに過ごせる場として相応しいグラフィックをといろいろ思案し提案しました。各年齢別に分かれたクラスのシンボルアニマルを子どもたちがハサミで切り抜いたかのような単純明快なキリンやパンダのシルエットが大胆に走り遊ぶ。それらの動物たちにまつわる景色や物をパターン化してファブリックのように大きな壁面にしつらえました。はたして子どもたちの感覚をどう刺激しているのやら?

Kouma

Kirin

Panda

Koara

Surusu


ナンバーキャラタで識別。遊び心のある愉快な試み 〈マチカプロジェクト〉

 「数字の1はナーニ・・・」という数え歌をご存知だろうか?
 覚えにくい数字を言葉や絵に置き換えて記憶にとどめることはよく行われます。これは、駐車場という味気ない空間を優しさのある愉快な空間へ少しだけ変貌させようという試みです。
 ほとんど機能だけのこの場所をちょっとした色と工夫で、どこに駐車したかまごつくことも減るばかりか、子どもたちとの愉快な会話を生み出したり、にぎわいある公共施設への導入口として期待感のある空間を模索する試みです。人間の記憶や感じ方は多種多様で老若男女それぞれの嗜好や経験などで大いに異なります。とにかくちょっと価値観を変えて楽しんだり、認めあったりすることが大切なのです。そこで下記の様々な表現要素で不思議なキャラクタをつくり、愉快で記憶に残るグラフィックを提案しました。

❶数字(階数)で覚える
❷色で覚える
❸配置(レイアウト)で覚える
❹キャラクタ(形状)で覚える
❺イメージ(物語)で覚える
❻組合せで覚える


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熊本市医師会・看護学校サイングラフィック

文字組について・・・・(縦組は天と地を繋ぐ無限に連なる文字組・・・)

 縦組で文字を表すのは漢字を使う国だけなので、横書きだけで自国の文字を表す人々にとって縦書きはたいそう奇異にうつることでしょう。横組の漢字や仮名が氾濫する今、サイングラフィックに視線が上下する流麗な縦組を試みることで、皆の感性をちょっとだけ刺激してくれることを期待しました。視認性を考慮しつつより縦組が際立つように、文字を長体(細長くする処理)に、しかも細筆(面相)で書いたような細身の書体を選んでいます。
 ここで縦組の文字配列にこだわったのは、外観に使われる縦長のアルミルパネルから細長の短冊を連想したからです。古代の木簡が起源といわれる俳句や和歌をしたためるあの縦長な紙です。七夕に子どもたちが願いを込めて笹に下げるあれです。その短冊には漢字や仮名が流暢に書かれ、伸びやかな文字組の姿がサインに再現することができないか模索しました。英字についても漢字や仮名同様に縦に組むことでより流麗感を持たせてみました。


絣模様について・・・・(伝統的な工芸品の多くは、構造体それ自身に装飾性が内包されている)

 熊本に限らず日本各地に見られる絣は、かつては人々の営みに根付いた身近な織物でした。正藍で染めた素朴で力強い綿糸で織り上げる肥後絣は洗うほどに色が冴えより着やすくなって馴染むと言います。縦糸と横糸が織り成す井桁や亀甲など伝統的な模様が特徴的な熊本の肥後絣。そんな素朴な模様をグラフィックパターンに活用してみました。織物という構造に装飾性が発見できる良い例です。


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群馬大学医学部石井記念ホールモニュメントサイン/バナーサイン

絹の街前橋を象徴する煉瓦つくりの建物が残念なことに少しずつ姿を消しつつあります。そんななかで、なんと群馬大学医学部職員駐車場でじっと出番をまっていた古びた煉瓦の門柱が檜舞台に立つことになりました。付属病院等多くの施設が乱立する医学部学内のど真ん中に石井記念ホールというカフェテラスと医学生の学習ルームが完備された近代的な学生会館の完成とともに、その入り口サインにこの門柱を移設して施設名を配したサインモニュメントとして。絹産業衰退とともに筑波学園都市へ移ってしまった前橋蚕糸試験場(国立原蚕種製造所前橋支所)の門柱として明治44年から昭和55年までその役目を果たし、その後ずっと日の目を見ずいたのです。街並みにとって古めかしい建物も景観のひとつとして残していくことが大切。スケッチする時だって赤土色の古びた煉瓦の建物がアクセントになって画面がとてもイキイキするものです。今や、立派な校舎や施設群に囲まれながら、なんとも良い学内のアクセントになっています。

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小布施町立図書館サイングラフィック まちとしょテラソ

 やたらに大きく、しかもあちこちにちりばめられ、当然それが動き出せばいっしょに動きだし、そして重なりあったり隠れたり繋がったり・・・。
 例えば町中の看板や駅のホームの文字など、物陰に隠れてしまった漢字はその一部を見ればだいたい間違いなく想像できるものです。ちょっと乱暴なもの言いかもしれないけれど、あまりに親切丁寧な表現は、人間の想像力を台無しにしてまうものです。それぞれの空間を一時的に仕切る扉に、その場所を意味する部屋名の表記は、機能として必要です。でもそこでは、それ以上にいろいろなことが行われ、活用されるのです。この計画では、漢字を扉の表示サインとして、また意匠の素材として工夫しながら自由に配置(レイアウト)することで、文字のもつ造形的な美しさを知るとともに、その空間をそれ以上のものに感じさせてくれることを狙いました。それにしても、こんなにも拡大された文字を間近で見ることはめったにないせいか、なんだかいつも目にしている馴染みある漢字と違うような、ちょっとした錯覚に落ち入ってしまいそうです。


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高崎市立桜山小学校サイングラフィック

高崎市立桜山小学校のしつらえ

 時が経つと大切な思い出も次第にうすれていくものです。それが生まれて初めて通う小学校での刺激的で楽しい経験だとしても。母校が廃校という憂き目にあってしまったり、故郷から遠く離れて生活していたならなおさら、思い出すことはなかなかありません。それにしても、おとなになると最終学歴は問われても出身小学校を聞かれることがめったにないのは何故なんだろう。うすれつつある小学校での数々の記憶は、幼なじみや恩師たちと過ごした校舎とともに甦ってきます。重厚な昇降玄関、広くて長い廊下、ゆったりとした階段踊り場、天井の高い立派な講堂・・・。
 昨年からこの春にかけて、思いがけず小学校建設計画にかかわるという貴重な体験をしました。記憶の奥底に眠っている私の中の小学校とはあまりにかけ離れたその斬新なデザインにしばらくの間、期待と違和感が入り混じった戸惑いがありました。でも、姿を現したその校舎を目の当たりにしたその時、模型や計画図面を正確に読み取って、これから生み出される新しい空間(あるいは環境)を受容する能力にひどく欠けていた自分に気付いたのでした。
 一昨年の夏、私は東京にあるナスカ一級建築士事務所の会議室に置かれた畳二枚分もあろうかという建築模型の前にいました。小学校のサイングラフィックデザインの協力を依頼され、その打ち合わせのために。
 建築設計に求められている様々な配慮のひとつにその空間にふさわしい誘導、表示サインの計画があります。サイングラフィックにこだわり、そこまで気配りすることは決して多くはありません。いやほとんど無いと言っても過言ではなく、大きな建築計画でさえおざなりになることもあります。この施設にはサインばかりか、広い校舎と敷地内のいたるところに工夫、こだわり、配慮がちりばめられているのはこの建築を見れば一目瞭然です。地域解放という本来の学校にあるべき機能をはたすには、来訪者に対して案内表示サインが当然求められます。それだけで変化を楽しませてくれるジグザグ状の校舎には、冬場の季節風など地域環境に対応した配慮が隠されている。2階に集約されたオープン形式の普通教室は多様な用途にも対応できるよう配置され、学年、クラス間の活発な交流を促すのびやかな構成となっている。このような新たな試みを果たすために適切な学年表示サインとクラス表示サインが大きな役割をはたすのです。1階に配置された職員室や保健室、図工室や音楽室などの特別教室に施された表示サインには、グラフィック処理された巨大漢字が楽しく踊り、学びの場らしいしつらえがなされました。
 今はもう消失して、思い出の中に埋もれてしまった私の知るかっての小学校には、一緒にいたずらをした同級生たちや厳しい反面優しさを表現できる先生たちの場があった。この施設には、かっての小学校のように総てを受け入れてくれるであろうそんな建築物としてのしつらえを強く感じさせるのです。サインデザインを口実に、教師でもなければまして小学生でもない私が一足お先にくまなく校舎を歩き巡って、優しく居心地の良いしつらえのある場所を発見するのにそう時間はかかりませんでした。なだらかな傾斜の向こうに榛名山を一望でき、古くから拓かれた歴史ある地域に造られた高崎市立桜山小学校は、この地域に生まれ、移り住む子どもたちが通い長い時間過ごすのです。新校舎内では、これから確かに他の学校同様の営みが繰り広げられるはずですが、桜山小学校ならではのある種開かれた明るい環境から生まれる刺激的で濃厚な経験が子どもたちの記憶に深く刻まれるのです。明るい昇降玄関、のびやかな長い廊下、みんなが行き交う階段踊り場、清潔で開放感のある教室・・・そしてサイングラフィック。

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