« 2010年3月 | メイン | 2010年5月 »

玉村町 平和のモニュメント『実りの大地』

 ここには、二つの遊び場があります。ひとつは、水遊びの出来る池と流れ。もうひとつは、あたりを見回せる丘です。池には、常に水が沸き出し、中心に置かれた御影石は、自然の割肌をさらしています。青葉の繁る季節に、汗ばむ夏の日に、親子連れがこの池の水に足をひたす様子を、おひさまと、この御影石が優しく見守ります。穏やかなときの流れは平和をやさしく教えてくれます。子どもたちは天をめざすように丘を駆け登り、息をはずませ、池を見下ろします。その時、ふと聞こえるかすかな水の音。丘のてっぺんのケヤキの下に置かれた石に耳をあてると、したたり落ちる水の音が聞こえてくるのです。眼下に広がる池の水、丘の上で音で気配を感じさせる水。子どもたちは、目と耳で別々の「水」を感じることで、より親密に「水」を体感できます。
 玉村町にとって、「水」は特別な意味をもっています。かって、この辺り一帯は、烏川、利根川に挟まれながら、高台であったため、乾いた土地が広がるばかりでした。この荒れ地を県内でも有数の稲作地帯に変えたのが、「滝川用水」です。これによってこの地は「実りの大地」に生まれ変わったのです。
 「水」は命の源。すべての命が水を必要としています。時に人は、その水を求めて、自然に対して、果敢に挑まなければならないことがあり、その時の苦労や汗、そして技術は、時を経るとともに、「文化」と呼ばれるようになります。現在玉村町は、住み良い町として、全国でも屈指の人口増を誇る町です。水質浄化センターの建設をきっかけに、様々な施設が整いはじめています。
 この地の丘と池は、「水」によって結ばれています。丘の上でかすかな音をさせている水は、地下を通り池に沸き出し、水をたたえています。これは、滝川の流れと浄化センターを暗示しています。大地を潤し「水の循環」により、「水と大地が浄化」され、「実り」をもたらします。親水地のメインオブジェの白御影石は、群馬県東村沢入産です。人為的に分割し、ズレを入れ、上部を丹念に磨くことで、自然(石)と人間(加工)の共生や、未来への可能性と希望を表現しました。ここで「水」と戯れ「石」に触れ、丘を走り回ることは、玉村町の「歴史」と「未来」を体感することにほかなりません。

001_5


002_4


003_3


[落とされた石]

榛名湖畔公衆トイレモニュメント

このモニュメントは、榛名湖畔の駐車場につくられる公衆トイレに付随するものとして制作しました。当然のことながら、この小建築が造られる土地は人為的に広げられ駐車場として大いに活用されています。人間の存在は、地球に生まれてから自然を押しのけてそのエリアを拡大し続け、それについて今や大変深刻な状況を呈しています。そのような拡大された土地(エリア)を利用するにあたりエリアの拡大抑制が公衆トイレの計画のテーマとなっており、「落とされた石」*の考え方に基づいた施設の在りようやこの場の状況を象徴的に表現するものとして制作しました。

*山の斜面の岩の一部が、ある日突然転がり落ちて山の木を折りノ草の茂る野原に場所を移す。石の止まった所は、野草が枯れ石によって日影になった部分さえ枯れないにしてもその生育が悪化する。しかしながら、石によって作られた新しい環境に適合した植物や小動物が集まって来て、以前とは違った世界が展開してゆく。この施設は、落とされた石の範囲内で2コ目の石は落とさない方法で計画されている。

001_4


002_3


囲まれた場=そして未来に開かれた空間

高崎神社(群馬県高崎市)
 歴史ある県社高崎神社では、毎年多くの神前結婚式が行われています。式のありかたが多様化する中、伝統的なスタイルにとらわれない新しい式場としてこの空間は計画されました。限られた空間をより広くのびやかにするために式場の両側面はガラス張りとなり、外部空間を庭園化して内部に取り込んだ一体感のあるデザインとしました。北面は、ボリュームのある白御影石の列柱が15本小高く盛った土の上を高さを違えて弧状に配しました。内部の床面と同レベルには、同じく白御影石の自然玉石を置き直径1.5メートルもあろうかというつくばいをしつらえました。式の時は、つねに水が溢れ祝福の花が浮かべられ結ばれる二人の門出を祝福します。南側は、自然の割肌を生かした板状の御影石を同じく15面並べ僅かにできた石と石の隙間から明るい日差しが差し込み幸せな未来を予感させてくれます。北面の弧と同心円内には、乱ばりに石が貼られこれも室内床と同レベルになっています。重く強固に立ち並んだ石たちが二人を守りがら、強い絆と幸せな未来を導くであろう厳粛な場になりました。

003_2


002_2


001_3


MONUMENT[積水]

[積水ハウス株式会社・高崎営業所 石造モニュメント]
 ここに使われた石は、8,700万年前の白亜紀後期に生まれた白御影(花崗閃緑岩)です。今、永い眠りを破って勢多郡東村沢入の石切場から掘り出されました。石塊を縦に四分割し、裂け目をあたかも水が流れるかごとく磨き。その上面の交差部をもすり鉢状に磨き出し、天の恵みの受け皿を造りました。さらに内部を分割し、外して空洞にしつらえました。水がゆったり滴り落ち蓄積していく空間なのです。ここでは、積水ハウスの社名に由来する孫子の「積水」―あつまりたたえた水が強い力となり、それでいてどんな形にも姿を変えながらまた再生する姿―を象徴しています。そんな時間を超えた自然のサイクルと力強さを造形しました。また、くり抜いた本来内部にあるべき石たちは入り口周辺と風除室に置かれ石造のサインとしてより存在感がでたのでした。

003

002

001


最近の写真

  • Surusu
  • Kouma
  • Panda
  • Kirin
  • Koara
  • _mg_7226
  • _mg_7179
  • _mg_7162
  • _mg_7156
  • _mg_7152
  • R0018510
  • R0018508