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群馬大学医学部石井記念ホールモニュメントサイン/バナーサイン

絹の街前橋を象徴する煉瓦つくりの建物が残念なことに少しずつ姿を消しつつあります。そんななかで、なんと群馬大学医学部職員駐車場でじっと出番をまっていた古びた煉瓦の門柱が檜舞台に立つことになりました。付属病院等多くの施設が乱立する医学部学内のど真ん中に石井記念ホールというカフェテラスと医学生の学習ルームが完備された近代的な学生会館の完成とともに、その入り口サインにこの門柱を移設して施設名を配したサインモニュメントとして。絹産業衰退とともに筑波学園都市へ移ってしまった前橋蚕糸試験場(国立原蚕種製造所前橋支所)の門柱として明治44年から昭和55年までその役目を果たし、その後ずっと日の目を見ずいたのです。街並みにとって古めかしい建物も景観のひとつとして残していくことが大切。スケッチする時だって赤土色の古びた煉瓦の建物がアクセントになって画面がとてもイキイキするものです。今や、立派な校舎や施設群に囲まれながら、なんとも良い学内のアクセントになっています。

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小布施町立図書館サイングラフィック まちとしょテラソ

 やたらに大きく、しかもあちこちにちりばめられ、当然それが動き出せばいっしょに動きだし、そして重なりあったり隠れたり繋がったり・・・。
 例えば町中の看板や駅のホームの文字など、物陰に隠れてしまった漢字はその一部を見ればだいたい間違いなく想像できるものです。ちょっと乱暴なもの言いかもしれないけれど、あまりに親切丁寧な表現は、人間の想像力を台無しにしてまうものです。それぞれの空間を一時的に仕切る扉に、その場所を意味する部屋名の表記は、機能として必要です。でもそこでは、それ以上にいろいろなことが行われ、活用されるのです。この計画では、漢字を扉の表示サインとして、また意匠の素材として工夫しながら自由に配置(レイアウト)することで、文字のもつ造形的な美しさを知るとともに、その空間をそれ以上のものに感じさせてくれることを狙いました。それにしても、こんなにも拡大された文字を間近で見ることはめったにないせいか、なんだかいつも目にしている馴染みある漢字と違うような、ちょっとした錯覚に落ち入ってしまいそうです。


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高崎市立桜山小学校サイングラフィック

高崎市立桜山小学校のしつらえ

 時が経つと大切な思い出も次第にうすれていくものです。それが生まれて初めて通う小学校での刺激的で楽しい経験だとしても。母校が廃校という憂き目にあってしまったり、故郷から遠く離れて生活していたならなおさら、思い出すことはなかなかありません。それにしても、おとなになると最終学歴は問われても出身小学校を聞かれることがめったにないのは何故なんだろう。うすれつつある小学校での数々の記憶は、幼なじみや恩師たちと過ごした校舎とともに甦ってきます。重厚な昇降玄関、広くて長い廊下、ゆったりとした階段踊り場、天井の高い立派な講堂・・・。
 昨年からこの春にかけて、思いがけず小学校建設計画にかかわるという貴重な体験をしました。記憶の奥底に眠っている私の中の小学校とはあまりにかけ離れたその斬新なデザインにしばらくの間、期待と違和感が入り混じった戸惑いがありました。でも、姿を現したその校舎を目の当たりにしたその時、模型や計画図面を正確に読み取って、これから生み出される新しい空間(あるいは環境)を受容する能力にひどく欠けていた自分に気付いたのでした。
 一昨年の夏、私は東京にあるナスカ一級建築士事務所の会議室に置かれた畳二枚分もあろうかという建築模型の前にいました。小学校のサイングラフィックデザインの協力を依頼され、その打ち合わせのために。
 建築設計に求められている様々な配慮のひとつにその空間にふさわしい誘導、表示サインの計画があります。サイングラフィックにこだわり、そこまで気配りすることは決して多くはありません。いやほとんど無いと言っても過言ではなく、大きな建築計画でさえおざなりになることもあります。この施設にはサインばかりか、広い校舎と敷地内のいたるところに工夫、こだわり、配慮がちりばめられているのはこの建築を見れば一目瞭然です。地域解放という本来の学校にあるべき機能をはたすには、来訪者に対して案内表示サインが当然求められます。それだけで変化を楽しませてくれるジグザグ状の校舎には、冬場の季節風など地域環境に対応した配慮が隠されている。2階に集約されたオープン形式の普通教室は多様な用途にも対応できるよう配置され、学年、クラス間の活発な交流を促すのびやかな構成となっている。このような新たな試みを果たすために適切な学年表示サインとクラス表示サインが大きな役割をはたすのです。1階に配置された職員室や保健室、図工室や音楽室などの特別教室に施された表示サインには、グラフィック処理された巨大漢字が楽しく踊り、学びの場らしいしつらえがなされました。
 今はもう消失して、思い出の中に埋もれてしまった私の知るかっての小学校には、一緒にいたずらをした同級生たちや厳しい反面優しさを表現できる先生たちの場があった。この施設には、かっての小学校のように総てを受け入れてくれるであろうそんな建築物としてのしつらえを強く感じさせるのです。サインデザインを口実に、教師でもなければまして小学生でもない私が一足お先にくまなく校舎を歩き巡って、優しく居心地の良いしつらえのある場所を発見するのにそう時間はかかりませんでした。なだらかな傾斜の向こうに榛名山を一望でき、古くから拓かれた歴史ある地域に造られた高崎市立桜山小学校は、この地域に生まれ、移り住む子どもたちが通い長い時間過ごすのです。新校舎内では、これから確かに他の学校同様の営みが繰り広げられるはずですが、桜山小学校ならではのある種開かれた明るい環境から生まれる刺激的で濃厚な経験が子どもたちの記憶に深く刻まれるのです。明るい昇降玄関、のびやかな長い廊下、みんなが行き交う階段踊り場、清潔で開放感のある教室・・・そしてサイングラフィック。

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コレクション1 名画の花束ーモネ、ルノワール、ピカソ、ローランサン・・・

 クロード・モネの「色彩レイアウト」感覚の素晴らしさは、あらためて驚かされます。《睡蓮》というモネのライフワークだったこの作品群のひとつに、その上に文字をちょこちょこっと簡単に配しただけでレイアウトが完成です。デザイナーとしてはなんだかあっけなく、でもちょっとした充実感・・・。
 さて、かって油絵を描きはじめた中学生の頃、印象派の画家達はやはり気になる存在でした。ヨーロッパの近代絵画はとても新しく感じ、本当に魅力的でした。しばらくして、高校生になるころには次第に時代を遡りルネサンス絵画などにも魅了されました。油絵学科の大学生になると抽象表現主義、ポップアート、コンセプチャルアート、具体、モノ派なんでも興味をもったものの何もできなかった。時が経ってあの頃と異なる立場と視点で接するモネも良いものです。

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コレクション2 洋画の足あと

 高崎(旧箕郷町)出身の画家山口薫らが設立したモダンアート協会展へ出品するきっかけは、フカマチ画廊(高崎)で初めての個展をした折、小倉ポオ氏のお誘いからでした。10年間ほど出品して、その間安井賞展などにも出品させていただき、後に退会しました。日本洋画会の巨匠たちの作品は西洋の影響をうけながらも独自なスタイルと表現をそれぞれが確立しています。なかでも山口薫の作品は、私にとって格別です。その影響をうけてのモダンアート協会展出品の10年間だったと思います。考えてみるとデザインのお仕事に従事してからも同様にその影響下にあったことを実感しています。今あるデザインのお仕事のベースはそこのあるのかもしれません。きっと

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コレクション3 美術を楽しむ方法

 こんなにも美術作品が多様で楽しいものなんだと、あらためて感じさせてくれるコレクション展です。デザインにも少しばかりそれを反映させようとしてみました。
 さて、自宅の玄関にはオノサト・トシノブの星印をモチーフにしてシリーズ化したハガキ大のシルクスクリーン版画作品が4点並んでいます。親しくさせていただいていた画廊の方からとても安く分けてもらったものです。(数千円くらいだった)時々教室に通う受験生が平面構成の参考にもして役だっています。ここでは、私と同世代の作家の作品もあって、随分前ですが福田美欄氏は同じ展覧会に出品させていただいたことがあります。ちなみに美欄氏のお父様は世界的に有名なグラフィックデザイナーの福田繁雄氏です。

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コレクション4 アートの箱庭 昭和庁舎でみる現代美術

 美術がいかに新しい表現を追い求めているかがよくわかるコレクション展です。アートも進歩・発展を続けているのです。だって世の中もコンピュータや携帯電話など本当に急激に進歩・発展している。それだけが昔のままも可笑しなものです。
 さて、これらの作品がやけにデザイン的に感じるのはどうしてなんだろう?写真や動画画像など・・・。あるところではアートとデザインの境目がほとんど無くなってきている。アートが計画図をドローイングにしてみたり、表現媒体をいろいろ工夫してみたり。デザインが実験的な試みとして座れない椅子をデザインしてみたり、ワークショップを通じて経験をデザインしてみたり・・・。なかなか面白くなってきた。

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コレクション5 南城一夫

 前橋市馬場川沿いにあった南城一夫のアトリエ兼住まいは草木がうっそうと生い茂って、街中にあってそこだけ特別な異空間でした。そこからほどないところに焼夷弾をうけながらも幸運に空襲から難を逃れた清心幼稚園があります。なんとそこには南城一夫が訪れて描いたという古ぼけたオルガンがありました。朽ち果てつつあったアトリエも園児たちが元気に遊びまわっていた旧清心幼稚園舎(新しい園舎となっています)ももう今はありませんが「るなぱぁく」(旧中央児童遊園)の木馬館は、この展覧会の後、間もなく登録有形文化財になって、今なお現役として子どもたちを乗せて元気に夢の世界を駈けています。ちなみにに「るなぱぁく」のサイン・ユニフォーム等のロゴタイプは、前橋出身の詩人伊藤信吉(故人)の書をもとにして寺澤事務所(寺澤)がデザインしています。

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コレクション6 北の国のものがたりームンク、カンディンスキー、ココシュカ、シャガールの版画

 北欧の作家たちの版画集、詩画集が並んだコレクション6は、イエローからグリーンへ移り変わるグラデーションでデザインしました。もともと版画も印刷も同じ技術です。だから油絵などのマチエールや作品の照り返しなどをあまり心配せず作業ができて印刷物に馴染みやすいようです。ここに展示されたシャガールの作品のほとんどがリトグラフ(石版画)といって、この技術が改良されて現在のオフセット印刷になりました。もちろんここに並んだ印刷物は全てオフセットで印刷されています。版画技術の発達によって1点もののタブローから、たくさん制作可能な版画が流通するようになって美術が身近になって庶民のものになりました。

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コレクション七 日本画とのひととき

 コレクション展の回数数字をデザイン素材として使ってきましたが、日本画展ということで漢数字(七)表現にして、タイトルや解説文等も縦組にしてみました。
 さて、長いことアートとデザインの世界に関係してきましたが、何故か日本画とはあまり縁がありませんでした。でもそんな中で、このコレクション展に出品している塩原友子氏にはいろいろお世話になっています。今から十数年前、医師の由上修三氏の支援で行った展覧会で私の小品を購入いただきました。また、縁あって塩原友子「わがこころ」(上毛新聞社刊)の書籍デザインもさせていただいたのです。このコレクション展の解説にもあるように、いったい日本画ってなんだろう?と考えてみると塩原氏の作品には、そういう枠組みを忘れさせてくれる縦組ではない作品が多いのです。だからあらためて日本画家塩原友子と聞くと何だか不思議な感じを覚えます。

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