203 染み込む絵
アトリエの入り口には、おおよそ3坪ほどのコンクリートでかためた土間があります。宅急便の受け渡しやちょっとした来訪者との立ち話、打ち合わせなど靴のままですますことのできる便利な空間です。もちろん汚れたり、ゴミのでる作業は、もっぱらこの土間で行います。この夏は、猛暑をしのぐため何度となくこの土間に水を打って涼を求めています。でもやっぱり暑い日は、雷とともにやってくる本物の夕立こそ私たちの火照を鎮めてくれます。焼けた地面にポツポツと落ちる大粒の雨の跡とともに鼻孔に飛び込んでくる夕立の匂い・・・なんだかたまりません。せっかくだからこの土間をキャンバスにして、たっぷりと水を含ませた太い筆で絵を描いてみました。水の染み込んだ筆跡がみるみる伸びやかかに広がります。てらうことなんかありません。一気に描ききらねばなりません。だってみるみるうちにぼんやりしてきて、終いには跡形もなく消え失せてしまいます。ところで、昔に比べて、なんだか夕立が少なくなったように感じます。