188 伊三郎の椅子
実質ブルーノ・タウトを呼び寄せたという上野伊三郎は、群馬工芸所(群馬産業技術センターの前身)の初代所長としてしばらく間、群馬で過ごしました。京都出身の伊三郎は、関西を中心に「日本インターナショナル建築会」とう建築運動を立ち上げ、タウトはこの会に招聘されて日本へ立ち寄ったと言えます。ドイツ人でデザイナーのリチ婦人とともに伊三郎は、工芸所で地元群馬の山間部に自生する篠竹を活用して、地元の職人によってつくられる椅子と卓子のデザイン、製作しました。これらは、タウト指導のもと井上房一郎によって出店されたミラテス(銀座店と軽井沢店がありました。)というデザインセレクトショップに置かれ市販されたと言います。写真のみ残されていたそれらの一部が、タウトが日本滞在中唯一デザインした熱海の日向別邸の地下室で発見されたのです。一時この椅子の復元を模索していましたがしばらく頓挫しています。でも、いつか再現したいと思います。そこには、きっと群馬の産業を元気にするヒントがあるかもしれせんから。